シンガポールの港湾で水素実証、千代化が脱水素装置を提供

千代田化工建設は7月12日、シンガポール港湾地区における輸入水素の利用に関する共同実証プロジェクトにおいて、小型脱水素装置を提供し、実証運転を開始したと発表した。

 シンガポールの港湾運営会社PSA Singapore(PSAシンガポール)が運営する世界最大規模の港湾内のコンテナヤード(Pasir Panjang Terminal)に小型脱水素装置を設置した。水素キャリアであるメチルシクロヘキサン(MCH)をシンガポール国外から輸入し、同装置を用いて水素を取り出す。今回は短期間・小規模での実証となるため、市況に流通しているMCHを利用する。

 MCHは、トルエンと水素の化学反応により生成される常温・常圧で取り扱える液体。医薬品や農薬の製造における溶剤、ジェット燃料の混合剤、修正液の溶剤などに広く使われている。化学的に安定しているため取り扱いが容易で、既存の石油・石化製品の規格やインフラを活用できる。

 小型脱水素装置は、国内で製造して組み立て、コンテナ船で輸送後、現地で据え付けた。精製水素の製造能力は30Nm3/h(年産約2t程度)。精製水素は、ISO(国際標準化機構)で規定される燃料電池向けの純度99.97%を満たし、港湾内でコンテナ輸送に使われる大型燃料電池車の燃料に使用される。

 シンガポール政府の低炭素エネルギー研究助成イニシアティブ(LCER FI)の助成金を活用し、シンガポールの南洋理工大学(NTU)、PSA、千代田化工建設の3者が共同実施する。シンガポールの既存の法規や規制の範囲内で実証開始に必要な許認可を取得し、新たなルール作りを必要とせずに水素利用を実現した。実証期間は2025年第2四半期までの予定。

 千代田化工建設は、2020年3月にシンガポールおよび日本の民間6社と覚書を締結し、水素サプライチェーンの商業化、コスト低減へ向けた案件開発を進めてきた。また、2022年からNTUと共同で、同社独自のSPERA(スペラ)水素技術を基にした脱水素触媒改良に関する研究開発プロジェクトに取り組んできた。脱水素装置の商業化には10~20倍程度のスケールアップが必要と考えられ、今後、2030年の水素社会の実現に向けて各種検討を進めていくとしている。

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