パナソニック、燃料電池の排熱を空調機で活用、草津市で実証開始

パナソニックは7月29日、滋賀県草津市の実証施設「H2 KIBOU FIELD(H2キボウフィールド)」において、純水素型燃料電池の発電時に排出される熱を吸収式冷凍機(空調機)の熱源として活用する実証実験を開始したと発表した。燃料電池のコージェネレーション(熱電併給)システムによるエネルギー効率の向上と冷暖房設備としての消費電力の低減を目指し、市場性や有効性を検証する。

 H2 KIBOU FIELDでは、5kWタイプの純水素型燃料電池99台、約570kWの太陽光発電、約1.1MWhの蓄電池を組み合わせ、これら3電池を連携制御することで、燃料電池工場の電力を再生可能エネルギーによる自家発電で賄っている。2022年度から、エネルギーマネジメントにより、発電余剰や使用電力の無駄を抑えて再エネを効率良く安定的に供給する実証実験に取り組んでいる。

 今回新たに開始する実証では、5kWタイプの純水素型燃料電池10台と8冷凍トンの低温排熱利用型吸収式冷凍機1台、6HPの冷水アシスト型業務用エアコン室外機1台、室内機2台を用いる。これまで純水素型燃料電池から回収できる排熱は最高60℃、吸収式冷凍機に必要な熱源は最低80℃と20℃の乖離があり、熱源活用が困難だった。両機器で温度差を10℃ずつ改良し、70度の熱での連携を可能にした。

 純水素型燃料電池の実証機には、高温化による触媒材料の劣化に対応するため、新規開発中の従来比2倍の触媒活性となるメソポーラスカーボン(MPC)触媒を搭載し発電性能を向上させた。また、熱交換器によって熱回収効率を上げることで出湯温度を10℃引き上げ、出湯温度70℃を実現した。燃料電池でつくった電力と熱を活用することで総合熱効率は95%に達する。

 吸収式冷凍機は、水が蒸発する際の気化熱を利用して冷水を生成する。これまで80℃未満の排熱では、水蒸気を回収する吸収液を濃縮再生することが困難で、吸収量が減り冷凍能力が低下する問題があった。今回、吸収液を段階的に濃縮する滴下式再生器を導入し、70℃の排熱でも吸収液を高濃度化する技術を開発した。また、圧力を高めた二段式蒸発吸収技術により吸収量を増加させることが可能になった。

 吸熱式冷凍機が生成する冷水を直接冷房に活用するのではなく、既設の個別空調機(業務用エアコン)の消費電力を低減するアシストとして活用する。冷水を用いてエアコンの冷媒の凝縮温度を低下させることで室外機の圧縮機に必要な電力を低減し、室外機・室内機を含む空調機全体における消費電力を50%削減させた。

 吸収式冷凍機の冷水を業務用エアコンの省エネに活用するのは業界初の試みになる。また、工場などから排出される産業用排熱は、全体の70%を80℃未満の熱が占めることから、吸収式冷凍機の最低熱源温度の引き下げは産業用途における排熱利用の拡大につながるという。

特別声明:本サイトは他の機関やウェブサイトから転載されたコンテンツを引用し、より多くの情報を伝達するためであり、利益を得るためではありません。同時に、その観点に賛成したり、その記述を確認したりすることを意味するものではありません。コンテンツは参考のためだけです。 著作権は原作者に帰属しますので、侵害があれば、当サイトに連絡して削除してください。