国際海運におけるカーボンニュートラルに向けて、メタノールやアンモニアなどの燃料を用いた船舶の開発が進められている。常石造船(広島県福山市)は7月22日、フィリピンの造船拠点において、メタノール燃料ばら積み貨物船を、7月17日に同拠点・第2船台で進水したと発表した。竣工は2026年1月の予定。
同社のカムサルマックス(KAMSARMAX)型船を、重油とメタノールを燃料に利用できる二元燃料船化した。重油と比較して窒素酸化物(NOx)を最大約80%、硫黄酸化物(SOx)を最大99%、CO2を最大約10%削減できる。さらにグリーンメタノールを用いることで、船舶運航における脱炭素の推進に寄与するとしている。
カムサルマックス型船は、400隻超の竣工実績を持つ主力船型になる。浅喫水と同時にエアドラフトを抑える設計を採用し、主要港の多くをカバーできる汎用性が特徴。全長は229mでギニアのカムサール港に入港可能。
また、伊藤忠商事は7月14日、同社100%子会社で在シンガポール特定目的会社(SPC)を通じて、佐々木造船と5000m3型アンモニアバンカリング船の建造契約を、泉鋼業と同船に搭載するアンモニアタンクプラント製造に関する請負契約を締結したと発表した。2027年9月に完工する予定。
アンモニアはゼロ・エミッション燃料として期待されており、アンモニア燃料船は船会社・造船所・荷主など多くの海事関係者が開発を進めている。アンモニアバンカリング船は、洋上でアンモニア燃料船に燃料を供給する船で、アンモニア燃料供給のラストワンマイルを担う重要な設備として注目されているという。
今回の契約は、令和5年度補正「グローバルサウス未来志向型共創等事業(大型実証 ASEAN加盟国)(第2回公募)」に採択された「シンガポール国/舶用燃料アンモニア供給実証事業」に基づくもの。同船はシンガポール船籍で船主は同SPCになる。今後、シンガポールでのアンモニアバンカリング実証に向け、シンガポール海事港湾庁(MPA)など海事関係者や燃料生産者と具体的な協議を、日本国政府の支援を受けながら進めていく。
伊藤忠商事は、同船の建造・実証を通じて、洋上での安全な船用アンモニア燃料の供給オペレーションを確立する。伊藤忠商事の100%子会社で在シンガポール特定目的会社(SPC)がバンカリング事業を行う。船用アンモニア燃料の初期需要を確保することで、シンガポールでのアンモニアバンカリングの事業化を実現し、将来的にはスペイン(ジブラルタル海峡)、エジプト(スエズ運河)、日本など、世界の主要な海上交通要所への拡大を目指す。
国際海事機関(IMO)は「2050年頃までに国際海運からの温室効果ガスの排出をネットゼロにする」という国際目標の実現に向け、各国と協議を進めている。4月には、中期施策として船用燃料を段階的に温室効果ガス排出量の少ない代替燃料に転換する制度、ゼロ・エミッション燃料船導入に経済的インセンティブを与える制度を含む条約改正案が国際間で承認された。