矢野経済研究所(東京都中野区)は6月10日、国内の水素エネルギー活用機器・システムの市場規模予測を発表した。当該年度に新規導入される機器・システムの市場規模(金額ベース)は、2025年度に1123億円、2030年度には6633億円に成長すると予測する。
国内では、家庭用燃料電池(エネファーム)や燃料電池車(FCV)を中心に水素がエネルギーとして利用されてきた。政府が2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言して以降、水素への注目度が高まり、燃料電池を搭載した業務用・産業用機器、バーナーなど燃焼機器における水素燃焼技術の技術開発が進んでいる。先行企業は、実環境での性能検証や運用データの収集、メンテンナンスノウハウの蓄積を目的とした実証事業に取り組んでいる。
また、物流分野は、荷主のCO2削減ニーズや自治体の政策を背景に水素利用が進む可能性があり、燃料電池トラック・フォークリフト・クレーンなどが開発されている。燃料電池トラックは、実際の配送ルートを活用した走行実証実験が行われ、その結果を踏まえて走行実証エリアの拡大や車両の追加導入を検討する動きが見られる。燃料電池フォークリフトおよびクレーンは、物流拠点が立地する自治体が導入促進策を打ち出す例が出ている。
これらの水素エネルギー活用機器・システムの製品開発が進む一方、ユーザー企業・団体側では、水素の調達量と調達コストの安定的な確保が課題になる。現状、水素サプライチェーンの構築は途上であり、大量の水素を経済的に調達できる市場環境が形成されるまでには時間がかかる見込み。
2020年代は、調達可能な水素量と調達コストに応じて、動力源や燃料を柔軟に選択できる水素エネルギー活用機器・システムのニーズが一定数出ると予想される。このニーズを見込んで、化石燃料発電設備から燃料電池への付け替え可能な荷役機器、水素と他の燃料の混焼に対応した燃焼機器が登場している。
2030年代以降は、2020年代よりも調達可能な水素量の増加と調達コストの低減が進むと考えられ、市場規模も順調に成長する見通し。2035年度の市場規模は1兆765億円、2040年度は2兆401億円、2050年度には3兆3350億円と予測する。